私の答えが「日本人の答え」になる

私は日本館にある、三越マーチャンダイズストアでお酒や食品、陶器類、民芸品などの販売を行っています。現在はキャプテンを務めていますので、商品管理・在庫管理を担当するほか、マネージャーの補佐的な立場で仕事が効率よく運ぶよう努めています。
 
売り場は大きく4つのゾーンに分かれていて、私が受け持つFestivityゾーンはもっとも歴史の古い物を扱っているエリアですから、日本人のゲストにとっては「懐かしい」と感じていただけるものがたくさん並んでいます。たとえば、駄菓子類やお祭りの夜店で売られているようなものもあって、外国の方にはどうやって使うかわからないものや、ユニークに映るものもあります。そういった商品の説明を通して、日本の歴史や文化をお伝えするのも私たちの大事な仕事です。

 

私の答えが「日本人の答え」になる 前々から「日本の身近な食文化を外国の方に伝えたい」という思いが大きかった私は、CRプログラムへの参加が決まったとき、マーチャンダイズを希望しました。所属部署を決定する面接で、特に食品を扱っているFestivityゾーンで働きたいとお伝えし、幸いなことに希望通りの配属を頂いた時は本当に嬉しかったです。 けれども、研修が終わって最初に売り場に立ったときは少し戸惑いを感じました。
 
ここには世界各国からゲストがいらして、なかには日本について何も知らない、日本人に会ったこともない、という方もいらっしゃいます。その場合は私がその方にとって「はじめての日本人」ということになります。聞かれたことに対する私の答えが、その方にとっては「日本人の答え」になるかもしれません。私は日本人ではあるけれど、日本代表と名乗っていいのだろうかと、不安とプレッシャーを感じました。でもその一方では、日本に生まれて24年間育ってきたのですから、私にも伝えられることがきっとあるとも思ったのです。このふたつの思いを抱えながら、自分にできることを精一杯やっていこうと考えるようになりました。

その人にとっての日本文化を大切にする

私がマーチャンダイズを希望した理由は、それぞれの国による食文化の違いを知りたいと思ったからです。この職場では、ゲストがお酒やお菓子を手に取る様子を間近に見ることができます。ある程度決められたメニューから選ぶのではなく、数あるお菓子のなかからどんなものが選ばれるのか、なぜこの商品が好まれるのかなど、アメリカ人はもちろん、様々な国の人の嗜好や人気の理由を知ることができるのです。
 
また、ゲストとのコミュニケーションもこの仕事の大きな魅力のひとつです。私のセクションには「酒バー」というお酒の試飲ができるカウンターがあります。私自身はあまりお酒を飲みませんが、お酒取り扱い会社の方による年に2回の酒セミナーで、日本酒の作り方やそれぞれの日本酒の違いなどを酒造りのプロの方から詳しく教えていただきました。売り場にはお菓子も置いてあるので、日本酒にはお餅や小豆も合うなど、新たな発見もありました。 そのように学んだ知識と情報を接客に織り交ぜて、日本の酒文化をお伝えできればいいなと思っているんです。

 

その人にとっての日本文化を大切にする ゲストとお話ししていると、その方が持っていらっしゃる日本の知識が、私たちの知る日本とは多少違う、ということもあります。たとえば、私は関東出身ですが、ゲストにインプットされているのは関西圏の文化かもしれません。けれども外国人にとっては、それが「=日本文化」と断定的に定着することもあって、「その人にとっての日本文化」はそれぞれに違うのだなと感じています。
 
そんなときは、ゲストの知識を否定するのではなく、お話をお伺いし一度肯定して、「さらにこういう考え方もあるんですよ」「私が育った地域ではこうするんですよ」とお伝えするようにしています。反対にゲストに教えていただいくこともたくさんあって、自分の勉強不足を日々感じながらも、ゲストとの会話を楽しんでいます。

先輩から受け継いだものに、プラスαの感動を

前に一度いらしたゲストが再び来てくださる、ということがあります。そんなとき「お帰りなさい」と声をかけると、「あなたにもう一度会いにきたのよ」などと言ってくださるので、ゲストとの距離が一気に縮まるんです。遠い国からフロリダのディズニーワールドに来られて、数あるテーマパークの中からエプコット®を選んでくださって、もう一度私に会いに日本館に足を運んでくださる、貴重なバケーションの時間を割いてくださることを本当にありがたいと思いますし、とてもやりがいを感じます。
 
小さなお子様がラムネを買って、一度お帰りになったと思ったのに、何度も戻ってきては違う味のラムネを買いにきてくださったこともあります。その度に私がいるレジに来て、お話をしてくださった時は嬉しかったです。小さなことですが、そんな瞬間が私にとってのマジカルモーメントだと感じています。

 

先輩から受け継いだものに、プラスαの感動を これは私の同僚のエピソードですが、以前30分ほどかけて接客して購入に至らなかったゲストが、半年後にその商品を買いに来てくださったことがありました。お互いに相手を覚えていて、旧知の人に会ったかのように手を取り合って喜んだと聞いて、素敵だなと思いました。このゲストのように、大きな買い物になるとその場で決められなくて、「またね」と帰られる方もいらっしゃるのですが、「いつか戻ってきたい」と思っていただける接客をすることが大切なのではと思っています。
 
実際に、私がはじめてお会いするゲストでも、お話ししてみると過去に何度も日本館に来ていると言う方もいらっしゃいます。それは前回あるいは前々回に、先輩キャストが丁寧なおもてなしをしたからこそ戻ってきてくださったのです。CR社員は限られた期間での契約勤務で、年に数回新しい社員と交代します。今まで働いていたキャストその一人ひとりがゲストとの出会いを大切にして、先輩方から受け継いだおもてなしに、プラスαの感動のある接客をしていけば、後輩にバトンを渡していけるのではないかと思います。

ここで吸収したものを次のステップに活かす

ここで吸収したものを次のステップに活かす

私はマーチングバンドをやっていて、本場アメリカのチームに参加したくて、大学在学中に1年ほど留学しました。チームメイトが150人ほどいるなかで、日本人はたったの5人。アジア圏やヨーロッパのメイトもいて、それぞれに言葉や文化が違うなかで、気持ちをひとつにして音楽を奏でたことは感動的でした。その経験が私を今に導いていると思います。
 
国による文化の違いに興味を持った私は、国際社会に向けて日本人として何か伝えることができないかと考えるようになりました。さらに、その国の文化を知るにあたり、もっとも分かりやすいのは食文化だと思い、その方向で就職活動をしている際にCRプログラムと巡りあったんです。
 
本格的な就職をせずにアメリカに来たことに私自身も不安がありましたし、両親も心配しました。特に父は、CR社員としての契約が終わるとまた就職活動をしなければならないことを心配して、安定した仕事に就いてほしいと考えているようでした。私はそんな父の反対を押し切ってアメリカに来たのですが、今振り返ってもやはりこの選択をしたことに後悔はしていません。
 
ここでは海外の方に日本のことをお伝えするのが仕事ですが、実は伝えるだけではなく改めて日本を知ることもたくさんあります。CRの同期も日本全国から来ますので、地域による違いを知ることができましたし、海外から見た日本を知って、改めて「日本という国」を見直すきっかけにもなりました。
 
私はまもなく帰国しますが、ここでの経験は、本やメディアで見聞きするだけでは決して感じることのできない、価値あるものでした。様々な国の方々と伝え合い、わかり合い、真の国際交流を実践できたと思います。この経験は、この先どこでどんな形で働くようになっても活かせると思いますし、この一年で吸収できたことを誰かと共有し、発信していきたいと思っています。これからが楽しみです!

荒川 野萌のプロフィール

Q.1CRプログラム以前の海外生活経験は?
高校生のときに2週間オーストラリアに留学。その後、大学3年生と4年生の時に半年ずつ、通算1年間アメリカへ留学しました。マーチングバンドのチームに所属して、活動期間中に2シーズンを過ごしました。
Q.2CRプログラム参加前の英語力はどのくらい?
TOIECの点数は835点。文法に間違いはあっても、なんとか自分の言いたいことを伝えられる程度です。最初の留学では自分の思いを伝えられなくて悔しい思いをしたので、2年目に渡米するまでになるべくアメリカの友だちと会話するようにして英会話力を強化しました。
Q.3CRプログラム参加前の接客力はどのくらい?
接客経験はほとんどありません。スポーツジムのフロントやチェーン店のレストラン等でのアルバイト経験のみです。本格的な接客マナーは、CRプログラムの研修で学びました。
Q.4CRプログラム参加を考えている人にひと言!
私はこのプログラムに参加する前、いつくかの不安材料がありましたが、実際に来てみると、渡米前の想像とは良い意味で違っていました。みなさんが今不安に感じていらっしゃることもいくつかあるかとは思います。私もそうでした。ですがステキな経験が必ず待っていることを私は経験したので、今このホームページをご覧になり、興味があるならまず飛び込んでみてください。