毎日のゲストとの会話が楽しい

レストラン部門クイックサービスは、京都の桂離宮をモチーフにした「桂庭園」のなかにある、「桂グリル」「歌舞伎カフェ」「ガーデン・ハウス」を担当します。いずれの店もカジュアルなスタイルで、うどんやカレー、焼き鳥、スナックなどを提供し、日本の庶民的な食文化をお伝えする仕事です。配属されたばかりの頃、私はクイックサービスに少しマイナスのイメージをもっていました。日本館内レストランの東京ダイニングや鉄板江戸とは違ってカウンターサービスですから、ゲストに対して満足なおもてなしがでるかどうか、不安があったのです。

 

ゲストとのフランクな会話が楽しい けれども実際に仕事を始めると、ネガティブな気持ちはすぐに吹き飛んでしまいました。クイックサービスの仕事は、注文を受ける「キャッシャー」、テーブルをきれいにする「グリーター」などいくつかの業務がありますが、店も3店舗ですから、担当するポジションがたくさんあります。そして毎日ローテーションによって違う仕事を任されます。様々なポジションを経験するので、また違う立ち位置から仕事を見つめることができて、次にこのポジションを担当したらこうしよう、と新たな気づきがあるんです。
 
ダイニングレストランとカウンターサービスの飲食店では、それぞれにゲストがご利用される理由が違います。ダイニングレストランには、お料理やお食事の時間を楽しむという目的があって、ゲストの皆様は通常事前に予約をとってお見えになります。一方、カウンターサービスの飲食店は、お食事を楽しむゲストの他に、「パークを歩いたので休憩を取るために」「日本館に立ち寄ったのでどんな施設があるのか探検しに」などゲストの皆様はいろんな動機でお越しくださるのです。毎日たくさんの人が気軽に立ち寄ってくださるので、ゲストの皆様との距離の近さを感じます。
 
「焼き鳥ってどんな食べものなの?」「濁り酒って何?」などと、日本の食文化について訊かれることも多く、おそらくもっともゲストとコミュニケーションがとれる仕事ではないかと思います。

親しみをストレートに表現してくれる子どもたち

仕事中、なにげなく会話したお子様がハグしてくれることがよくあるのですが、一度とても印象的なことがありました。
 
その日私は桂グリルのグリーター担当で、外のテーブルをきれいにしていると、たまたま近くを通りかかった4歳くらいの女の子が、私を見てびっくりしたような顔をして急に立ち止まったんです。その子とお話ししたいなと思って近づいていくと、女の子は目をキラキラさせて、私に一生懸命話しかけてきました。ブラジルからのゲストだったので女の子が話すポルトガル語をほとんど理解できなかったのですが、一緒にいたお母様が「この子はあなたを見て、ムーランだと思ったのよ」と笑いながら教えてくれました。

 

親しみをストレートに表現してくれる子どもたち ムーランはディズニー映画のキャラクターのひとりです。中国のプリンセスですから、同じ東洋の顔をしている私を見てムーランだと思い込んだのでしょう。私は女の子と目線が合うようにひざをついて姿勢を低くしました。すると、女の子は私の顔を小さな手でなでて、内緒話をするかのように私の耳元に顔を近づけて、一人でこそこそと私に話し始めました。そして買ったばかりのディズニーのサイン帳を袋から出し、そのページを1枚破って、自分の名前を書いて私にプレゼントしてくれたんです。最後にギュッとハグして、ほっぺにキスをしてくれました。
 
小さなお子様のエピソードはもう一つあります。ニューヨークから来た6歳くらいの男の子も思い出深いです。私はその日もグリーター担当で、店内で食事をしていたその子と「今日は雨だね」などと少し会話をしました。その後、すぐに仕事に戻り、店内で忙しくしていたのですが、その間も彼は私にずっとアイコンタクトを送ってきていました。私もその男の子と目が合う度に手を振ったりしていたのですが、その子は帰り際、私に紙ナプキンを持ってきてくれました。その紙ナプキンには、「Thank You」という文字と私の似顔絵が書いてありました。
 
どちらも、日常のなにげないシーンなのですが、小さな子どもが親しみをストレートに伝えてくれるのは本当に嬉しい。それは私にとって宝物のような時間です。

ゲストの笑顔が私を笑顔にする

客席を綺麗に清潔に保つグリーターは、ホールや店の外にいることが多く、クイックサービスのなかでももっともゲストとふれあう機会が多いポジションです。グリーターを担当するとき、私はゲストの様子をさりげなく見て、お手伝いできることがあれば自分からお声がけするようにしています。

 

ゲストの笑顔が私を笑顔にする あるとき、小さな男の子がお子様プレートにほとんど手をつけずに、ご家族が困っていらっしゃる様子に気がつきました。私は男の子に、「嫌いなものがあったかな?」と聞いてみたんですが、何も答えてくれません。そこで、もしかしたらお箸が使いにくいのかもしれないと思い、男の子のお箸を輪ゴムで縛ってスペシャル チョップスティックをつくってあげたんです。 すると男の子は、「じゃあチャレンジしてみるよ」とプレートに手をつけて、「おいしいね!」と元気に食べてくれました。
 
お店ではお箸が使いにくい人のために、フォークや既成の子供用箸も用意してあるのですが、このときのようにその場でつくってあげるとゲストはとても喜んでくれます。これもひとつのパフォーマンスだと思います。
 
私たちは折り紙をその場で折って、ゲストの名前を漢字で書いてプレゼントすることもあります。小さなお子様に鶴を折って、パタパタと目の前で羽ばたかせると、みんな「それほしいな」「くれるの?」と期待感たっぷりの笑顔で、喜んでくれるのがとてもうれしいです。
 
アメリカに来たばかりの頃は、私はこの仕事に向いていないのではないかと悩んだことが何度もありましたが、その度にゲストの皆様との会話や、屈託のない笑顔に救われてきました。ほとんどのゲストが初対面ですが、不思議なことにまったく壁を感じないのです。接客の仕事が私は好き、それに人が大好き、ということを改めて実感させられる場面がよくあります。
 
ゲストは世界各国からお見えになるので、反応もそれぞれに違います。言葉も習慣も違うけれど、「この人はどうやったら喜んでくれるかな」と考えるのがとても楽しいんです。

言葉や文化の違いを超えてつながりあう

言葉や文化の違いを超えてつながりあう

私は幼い頃、ディズニーの教材で英語に親しみました。小中学校では英会話教室に通い、中学卒業後は両親のすすめでオーストラリアに、高校在学中はカナダに留学しました。留学先では、まわりの人がみんなオープンでやさしくて、世界が180度変わりました。
 
カナダ留学の際、カナダが多民族国家ということを知りませんでした。行ってみたら、私のホームステイ先がフィリピンのファミリーだったことに驚いてしまい、何一つ嫌なことがあったわけではなかったのに、学校に申し出てホームステイ先を替えてほしいとリクエストを出してしまいました。その頃の私はまだ子どもで、勉強不足でした。今思えば、留学する前に下調べをすべきだったことを反省し、そしてあのとき郷に従っていれば、文化の違いを学べる素晴らしい機会だったはずに違いないと、自分でチャンスを逃してしまったことをとても後悔しています。
 
高校卒業後は、専門学校の国際関係学科に入学しました。この学校では海外就職の斡旋もしていて、CRプログラムもそのひとつでした。私はずっと学んできた英語を生かすこと、日本人として仕事をしたいと願っていましたので、その両方に叶っているCRプログラムに応募しました。
 
私はこれからもっと社会を学ぶ必要があると思いますが、学生時代に学んだ英語や国際学を実践して、日々いろんな気づきを得ています。帰国後のことはまだ明確にイメージできていませんが、どんな方向に進んでもここでの経験が大きく役立つだろうと思っています。このプログラムに参加して社会人としての自立の一歩を感じています。親元を離れて自分で身の回りのことができるようになりましたし、クイックサービスの仕事を通して協調性も培えたと思います。とてもシンプルなことですが、私にとっては大きなことです。
 
国籍、言語、文化の違う人とのつながりやふれあいによって、満たされる瞬間も経験もたくさんありました。留学先でフィリピンのホストファミリーになじめなかった高校時代の私に、「大丈夫! 楽しいよ」と教えてあげたいです。

生田 茉莉香のプロフィール

Q.1CRプログラム以前の海外生活経験は?
中学卒業後、オーストラリアに2週間、高校2年生の時はカナダに1ヶ月間留学しました。専門学校時代にパリに2週間、学校のセミナーで行きました。
Q.2CRプログラム参加前の英語力はどのくらい?
旅行が一人でできる程度です。CRプログラム参加が決まってから、ホテルで半年間アルバイトをしました。そこで外国人のゲストの応対を担当していました。
Q.3CRプログラム参加前の接客力はどのくらい?
高校時代のアルバイトはファーストフード、卒業後はホテルでアルバイトをしましたが、ちゃんとした接客マナーを学んだのは渡米後です。
Q.4CRプログラム参加を考えている人にひと言!
ウォルト・ディズニー・ワールド®には世界中からゲストがお見えになるので、いろんな人と出会えます。そして、環境を一新できるので今まで見えなかったことも見えるようになり、新しい自分を発見することができます。