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日本文化交流大使として世界中のゲストに日本文化を伝える

CRの体験を知る

Interview 09

できませんではなく、
「なにが出来るのか?」を考える
日本館マジックの神髄は、おもてなしの心です

伊藤 恭子

2008年秋期飲食部門
ゲスト・サービス

ゲストの第一印象を決める大事なポジション

私の所属するゲスト・サービス職務は、大きく4つの業務で成り立っています。ゲストをお迎えする「ホスピタリティ業務」、ホスピタリティからゲストを引き継ぎ、ゲストが着席するまでの御案内業務を調整する「ポディアム業務」、テーブルの空き状況やスタンバイの確認を取る「アサイナー業務」、ゲストをテーブルへ御案内し、ダイニング・サービス職務へ引き継ぐ「シーター業務」。この中で、私は主に「ポディアム業務」を担当しています。

 

伊藤 恭子 ゲスト・サービス職務は、御来店頂いたゲストへの第一印象を決める大切なポジションです。言わば、日本館の顔となる存在でもあり、日本文化への関心を持って御来店頂いたゲストの御期待にお答えするパフォーマンスが必要になります。
 
着物の着込なしや歩き方は基より、「お辞儀」には細心の注意を払わなければなりません。フロリダに来るまでは「お辞儀」について深く考えた事もありませんでしたが、正直、三越アカデミーでの教育を受け「お辞儀がこんなにも難しいものなのか」と驚きました。ゲストにとって「お辞儀」は、日本文化の象徴的存在でもあり、日本人の代表として正しい「お辞儀」を通じ、本物の日本文化を正確にお伝えする事が私の使命だと考えています。

お叱りの言葉は励ましの裏返し。とにかく冷静に

東京食堂とTeppan Edoの営業時間は、季節などにより変動します。その日の最終予約時刻は午後8時45分。そのゲストが御来店されたのは予約受付時刻を終了した直後の8時50分のことでした。御案内時間は過ぎておりますし、ゲストは「予約をしていない」とおっしゃりますので、規則に従い、丁重にお断り致しました。

お叱りの言葉は励ましの裏返し。とにかく冷静に 一度は御納得頂き、お引取り頂いたのですが、数分後、同じゲストがポディアムに戻って来られました。驚いた事に、今度は「予約はある!」ともの凄い剣幕で主張され、引き下がりません。私どもは、何度もシステムを確認しましたが、ゲストの御予約は確認出来ませんでした。
 
予約有無の真相が、私どもの不手際なのかゲストの勘違いなのかは分かりません。正直、私も当惑してしまいましたが、すぐに気持ちを入れ替えました。「遠方からお越し頂いたゲストが、どうしても日本館のレストランでお食事をされたいのであれば、最善を尽くすのが私のミッションであるはずだ・・・」。私は「今の状況で、何が出来るか」を必死に考えました。
 
「まだ、入れないの!」と顔を真っ赤にして御立腹されるゲストは8名のグループ。 閉店間際の店内に空いている席は殆どありません。とにかく「感情的になるゲストの姿勢は、お店に入りたい気持ちの表れ」と自分に言い聞かせながら冷静さを保ち、アサイナーと懸命に連絡をとり、あと5~10分で空くテーブルの確認を続けました。

「出来ません」ではなく、「何が出来るか」を考える

「2つのテーブルに4名様ずつ御着席頂ければ、御案内出来ます」。 座席表を睨み続けていた、アサイナーからようやく返答が来ました。ひとつの解決策を見出せたわけです。

 

「出来ません」ではなく、「何が出来るか」を考える 予約の真相、顔を真っ赤にして感情を露わにするゲスト、店内の混雑・・・。しかも、応対は勿論すべて英語。今、振り返ると「米国三越に入社する前の自分だったら、完全にパニックになっていただろうな」と思います。英語力の向上、接客技術の上達などの技術的な成長はもちろん、日本代表として過ごす毎日の積み重ねから得た「今出来る、最善策は何かを考え、実行する」という前向きな思考パターンが、私の大きな財産となり、この日の苦境を乗り越える原動力になったのだと思います。
 
本当に相手の事を考えるのであれば「出来ません」ではなく「今出来ることは何か? 」という思考回路で、解決策を提案する。それが、状況を判断し、常に相手の気持ちを察する、日本文化の「おもてなしの心」ではないでしょうか。
 
どんな場合でも相手に心を開き、決して相手に責任を押し付けない。その気持ちと姿勢が不可能なことも可能にするのだと思います。「おもてなしの心=日本館マジック」。世界中のゲストを魅了する日本館の秘密は、ここにあります。
 
今回のゲストも、私どもの御対応にとてもご満足され、楽しそうにお食事をされた後、丁寧な御礼の言葉まで残し、お帰りになられました。私も大変嬉しく感じ、そんなゲストと接していると、私たちの考え方は間違っていない、と心から思えてくるのです。

自らチャンスを創り出し、人生を切り拓く

自らチャンスを創り出し、人生を切り拓く

私の海外への興味は、高校2年生の交換留学でアメリカに渡った事に始まります。もともとは、中学校受験にあまり興味がなかったのですが、親に言われるがままに行った中高一貫教育の学校。それが人生を左右したのでは、と今は考えています。
 
この留学を期に今まで苦手だった英語への興味は高まり、大学は英文科を専攻。大学時代、将来の進路に悩んでいた時も「ぬるま湯の大学生活だけは送りたくない」との一心から、アルバイトで貯めたお金をつぎ込んでアメリカへの留学を実現しました。初めての就職は、楽しい職場ではありましたが、やはり自分の人生目標との隔たりに悩んだ末、このプログラムへの参加を決意したのです。
 
こうして振り返ると、私は、いつも悩んだ時、自分と価値観の近い人との新しい出会いを求めてアメリカへ渡っていました。やはり、自分の環境は自分で変化させるしかない・・・。行動しなければ何も変わらないと思います。
 
「出来ません」ではなく、「何が出来るか? 」を考える。それは、相手とのコミュニケーションにおいても、また自分自身にとっても大切なマインド・セットであると、今、確信しています。
 
あと3ヵ月でCRプログラムも卒業です。卒業後はこのプログラムでの経験を活かしてホテルなどの接客サービスに従事したいと考えています。いつも新しい事を学び、周囲のみんなを幸せにさせられる自分であり続けたいですね。

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私と三越カルチュラル・リプレゼンタティブ・プログラム
私の13カ月プライベートアルバム
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    ブラント・シティーでは、毎年3月、イチゴ祭りが開催されます。大粒の真っ赤なイチゴはとろけるような甘さでした。

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    御存知、ディズニークルーズ!食べて、泳いで、観て、飲んで、寝てる暇もありません。もうサイコーでした!

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