CRの体験を知る
Interview 01
藤本 和美
2014年秋期レストラン部門
フルサービスゲストサービス
私が所属するレストラン部門のゲストサービスは、「Teppan Edo」と「Tokyo Dining」の統括受け付けとして、ゲストをお迎えするところから、担当のサーバーのお席までご案内するところまでを担当しています。いちばん最初にゲストにお会いする仕事なので、言うなれば「日本館の顔」的な役割。もしかしたら私がそのゲストにとってはじめての日本人かもしれませんし、そのときの第一印象で日本人のイメージがつくられてしまうかもしれません。ですから、どんなときも礼儀正しく、笑顔でゲストをお迎えします。
ときどき難しいリクエストをいただくこともあるのですが、そのために今何ができるかを常に考えて、先輩方に教えていただいた知識を活用しながら最大限お応えできるように努めています。
日本文化をお伝えするにあたって、ゲストを楽しませるという意味で、私は常にエンターテイナーでありたいと思っています。
ゲストサービスは着物を着て接客をしますので、日本館にいらしたゲストの皆様から注目されます。いちばん質問を受けるのが着物の帯についてで、「これは何のためにつけているの?」と聞かれるので、「帯はデコレーションである」ことや、「着物の丈は10~13フィートもあるので、身長に合わせて長さを調節するためにある」ことなどをお話しします。そうした日本文化の説明も、なにかに置き換えてお話しできると外国の方がイメージしやすいので、詳しい情報を本で調べたりアイデアを練ったりするんです。
昨年の暮れ、ゲストから「日本のHAPPY NEW YEARのおもしろい過ごし方を教えて」と尋ねられたのですが、うまく答えられなかったことがあります。日本人でありながら、しかも日本文化をお伝えする立場にいながら、日本のことをうまく説明できなかった自分にがっかりしました。CRプログラムに参加して4ヶ月ほど経っていましたが、それまで仕事に慣れるのに精一杯で、心に余裕がなかったということにも気づきました。それ以来私は、毎日ひとつずつ日本文化について調べるようにしています。さらにその知識をCRの同期と共有していますので、自分で調べるのはひとつでも、毎日ふたつの情報を蓄えることができます。今、ゲストとお話するのが本当に楽しいんです。
私は人よりも、ものごとを達成するのに時間がかかるタイプです。一緒にスタートしたはずの同期がどんどん仕事を覚えていくのに、私はなかなかうまく進めなくて、その歩みのスピードの違いに劣等感を感じていました。海外での暮らしも初めての経験でしたから、誰に相談していいかもわからず、ひとりで落ち込んでしまって、帰国することも考えていました。
そんなとき、あるご夫婦のゲストから、「あなたは意味があって選ばれてきたの。絶対ここにいることに意味があるのよ」と言われて驚きました。なぜそんな言葉をかけてくださったのかわかりませんが、そのゲストはお食事を終えた後、もう一度私のところに来て「私たちはクリスマスにもう一度あなたに会いに来ることに決めたわ」と言ってギュッと抱きしめてくれたのです。私は思わず泣いてしまったのですが、その一瞬で私の頭の中から「帰国」という言葉は消えていました。
私はいつも全てのゲストに対して「一期一会」の思いを持ってこの仕事をしています。「また来るわ」と言っていただいても、本当にお会いできるかどうかはわかりません。それでも絶対クリスマスまでに成長しよう、そしてもしお会いできたときは、絶対に笑顔でお迎えしようと決めました。
ゲストサービスの業務には4つのポジションがあります。「Welcome to JAPAN」とゲストをお迎えする「ホスピタリティ ホステス」、その後レストランへチェックインをする「ポディアム」、テーブルの空き状況を確認して調整する「アサイナー」、そしてゲストの方をお席までご案内する「シーター」があり、毎日ゲストサービスのCRはその中の一つのポジションを受け持つことになっています。
クリスマスの日、私はホスピタリティ ホステス担当で日本館レストラン玄関の赤い絨毯の上に立っていました。すると、こちらを見ている二人のゲストの笑顔をみつけました。私を抱きしめてくれたご夫婦が本当に来てくださったのです。そのときの感動は今も言葉にできません。こんな魔法のような瞬間が本当に自分に起こるとは考えてもいませんでした。この感動こそが、「ここにいることの意味」だったのかもしれません。
ウォルト・ディズニー・ワールド®・リゾートから15分くらいの場所に、「Give Kids The World」という、難病の子どもたちとその家族のための滞在施設があります。ここでは月に数回ボランティアを募集しており、私も時間が許す限り参加しています。学生時代から、ここでボランティアをすることがひとつの目標でしたから、CRプログラムに採用いただけたことで、この目標も実現することができました。
Give Kids The Worldに招待された子どもと家族は、ウォルト・ディズニー・ワールド®・リゾートにも無料でお越しいただくこともでき、Teppan Edoにも車椅子の小さな女の子とご家族がお食事に来てくださったことがあります。女の子はプリンセスのドレスを着ていましたが、ご家族のみなさんは「Make a wish」と書かれた、Give Kids The World のTシャツを着ておられたのですぐにわかりました。
その女の子はとても元気そうに見えましたが、後にお母様から命の時間が残り少ないことをお聞きしました。そのとき私はお母様に折り鶴をお渡しし、日本文化では鶴には幸せと長寿の願いが込められていることをお伝えしました。
お食事が終わってみなさんが帰られる際、女の子が私に会いにきてくれました。そして、彼女が自分で折った鶴を私にプレゼントしてくれたんです。しかもそれはエプコット®のパンフレットで作られていました。そのときのことを思い出すと、胸がいっぱいになります。
私が女の子に、「あなたの夢はなんですか?」と尋ねると、彼女は「日本に行きたい」と答えてくれました。私はそのとき、ディズニーという場所は、いろんな方々がいろんな思いをもって来られる場所なんだと実感しました。そうしたゲストの一人ひとりを笑顔にするために頑張りたいと、改めてこの仕事に対する気持ちが引き締まりました。
私たちキャストは、一日に何千人ものゲストにお会いしているのですが、ゲストにとっては、私たちは「一人」です。来られた方々の思い出の一つとしてずっと心に残っていくのだから、「一生輝き続ける思い出」をゲストに届けたいと思っています。
大学在学中の4年間、私は世界32カ国200人の子どもたちとの国際交流に参加していました。大きなNPO団体が主催している活動で、ボランティアとして所属し、各国の子どもたちに日本文化のすばらしさを伝えてきました。逆に、日本の子どもたちを連れて、インドネシアやアフリカなどの小学校を訪問させていただいたこともあります。そのプログラムを通して、世界中の文化を一度に感じることができましたし、国境を超えてつながりあう感動も体験させていただきました。この経験によって、日本文化をもっとたくさんの国の人に伝えたいという使命感が生まれたのだと思います。
けれども、やりたいことはわかっているのに、いざ就職するとなるとどうすれば今まで培ったことを活かせるのか、どうすれば日本文化を伝える仕事に就けるのかがわからず、明確な道を見いだせずにいました。
小学校教師の道も考えて準備もしていましたが、どこか迷いが残っていました。毎日悶々として答えが出ないので、あるとき自分の本当の気持ちを全部吐き出すつもりで、紙に書き出してみたんです。
「日本文化を伝えたい」「英語を使って仕事をしたい」「私の好きなディズニーのマジカルモーメントを体現したい」。
私は自分が書いた紙を見て、この3つを叶える仕事がどこかにあるかもしれないとふと思いました。そしてすぐに大学のパソコン室に行き、「日本文化 英語 ディズニー」のキーワードで検索してみたら、CRプログラムがヒットしたんです。あまりに驚いて、「わっ!」と叫んでしまいました。そしてホームページでCRプログラムの詳細を見たとき、これは運命だと思いました。それから私は、受験する予定だった教員採用試験をはじめ、将来のために準備したことをすべて捨てて、就職活動をこれ1本にしぼったんです。
私が日本文化に興味を持ったのは、母の影響も大きかったと思います。母は英語教師でしたから、ALT(中学校で英語を教える外国人教師)の先生がよく家に遊びに来ていました。茶道や書道を小さい頃から習っていて日本文化に親しむ機会も多かったことで、日本文化を海外の人に伝えたい、という思いが芽生えたのだと思います。
私が幼い頃からやってきたことをひとつにつなげてくれたCRプログラムに、今とても感謝しています。
CRの体験を知る
重い病気にかかった子どもたちが家族と過ごす滞在施設Give Kids The World。月に数回ボランティアを募集しており、私も時間の許す限り参加しました。クリスマスのパレードの時の子どもたちのキラキラした笑顔が忘れられません。
オーランドで最も大きな日本のお祭り『Japan Festival』に参加しました。JapanTeaamとして、牛丼、和菓子、お寿司、日本酒の販売をしました。普段の日本館での接客とは、また違った場になるのですが、外国人の方々の日本の食文化への関心の高さには驚かされましたね。