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クンケル 尚子

CR修了後の先輩たち

Interview 03

三越CRプログラムは挑戦の場所
そう、自分自身への挑戦です!

クンケル 尚子

2007年夏期 CRプログラム参加者
スウェーデン在住
日本語教師

自信が無いから、「すごいね!」と言われたかった

高校時代、私は何に対しても本当の自信がなく、だからこそ、一度でも良いから周囲をアッと驚かせ、「すごいね!」と言わせたい、言われてみたいといつも考えていました。

 

クンケル 尚子 高校時代に留学を計画したのも「国際キャリアの構築」などという、人生計画に満ちたものではなく、ただ単に、周囲を驚かせようという、あまりに幼稚な理由から。結局、経済的な理由から、高校時代の留学は実現しませんでしたが、短大を卒業後、就職して貯めたお金で英会話学校に通い続け、ついに、英国への留学を実現させました。
 
ボランティア活動への参加を機軸とした留学ですが、その頃でも「周囲を驚かしてみたい」という、幼稚な動機は持ち続けていたようです。あくまでも、自信の無さの裏返しかもしれません。でも、この留学で国際キャリアへの漠然とした憧れが、明確な自分の目標へと姿を変えたのですから、まぁ、結果オーライではありました。ついでに(?)、この留学で、私はスウェーデン出身の今の主人と出会いましたので、益々もってラッキー・ショットであったのかもしれません(笑)。
 
英国から帰国後、私は、三越CRプログラムの存在を知りました。「国際キャリア構築の為、何が何でも参加する」と誓った私は、将来的にスウェーデンに移住する事を視野に、人生計画を描き直したのです。4年生大学へ編入し、日本文化を専攻。CRプログラム参加への準備を着々と進めつつ、日本語教師資格も取得。大学卒業後、一度スウェーデンに渡り、そこからCRプログラムに応募しました。

あの人みたいになりたい…

三越CRプログラムに参加した私は、鉄板シェフへの配属となりました。Teppan Edoにおいて、江戸に生まれた日本食文化を、躍動感溢れる鉄板調理を通じ、真心のおもてなしとしてお届けする、重要な職務です。

あの人みたいになりたい… 配属後、私の目は、一人の先輩CR鉄板シェフの姿に釘付けとなりました。この先輩は、普段は控え目で口数も少なく、周囲とも意図的に少し距離を置いているようにも見えます。彼女は、鉄板パフォーマンスの前から自分だけの世界を構築し、周囲を遮断しつつ集中力を高め、一度ステージに立つと、周囲を圧倒するパフォーマンスを発揮するのです。私はこの先輩CRの虜になりました。 三越CRプログラムへの参加者は、自分の目標に挑戦を続ける挑戦者達が、その大半を占めています。私も自分自身がその一人であると考えていましたが、この先輩CR鉄板シェフの生き様を目の当たりにした時、「挑戦のレベルの違い」に愕然としました。
 
日本代表として、今、自分が何をすべきかを常に考え、凄まじい集中力と厳しさで徹底的な自己管理を行う。周囲の雑音から自分を遮断する精神力は、まさにプロの誇りに満ちた気高さでした。 ゲストを圧倒する調理技術と会話パフォーマンス。新人の私にはとても真似する事すら出来ません。CRプログラムに参加する以前は「周囲を驚かせたい」という幼稚な思考にあった私でしたが、この先輩CRとの出会いが、私を幼稚な思考から脱却させる大きな転機となりました。

「パフォーマンス」ではなく、「味」で勝負

先輩CR鉄板シェフとの「格差」に悩んでいたある日、私どもの教育担当でもあるマネージャーの方が声をかけてくださいました。「彼女を真似しようとしてみても、そう簡単にはいきません。むしろ、貴方は貴方の得意分野で勝負すべきです」。トンネルの向こうに、淡い光が見えたような気がしました。

 

「パフォーマンス」ではなく、「味」で勝負 高校時代から、これといった自信のない私は、正直、派手なパフォーマンスは得意ではありません。考えた末、私は、生意気にも「料理の基本である“味”で勝負をしよう」と決意をしたのです。
 
毎日、ゲストの残した料理を、裏でこっそり味見して(食品衛生規約違反、承知しておりました。マネージャー様、御免なさい!)「これは焼き過ぎ」「これは塩が足りない」など、自分なりに美味しい鉄板料理を研究し、克明なメモをとりました。特に鶏肉調理は、極めて難易度が高く、充分に火を通しつつ、肉汁を逃す事なく焼き上げる技術は、そう簡単には習得出来ません。しかし、私はこだわりました。マネージャーと相談しつつ、自分流にノウハウを積み上げ、研究と練習を続けたのです。
 
プログラムが終了する頃には「私は、Teppan Edoで最高の鶏肉調理が出来る」と豪語出来るレベルまで上達していました。これといった自信のなかった私が、初めて掴んだ「揺ぎない自信」でした。
 
「自信とは、自分を極める事」。これが、三越CRプログラムに参加して、ついに私が掴んだ自信の定義でした。他人に憧れたり、周囲の目を気にしている内は、自信など生まれる筈がありません。自分は自分・・・。自分の価値観と哲学を大切にしながら、自分を極めた時、それが自分への自信であり、周囲の評価などは、自ずと後からついてくるものだ、と気が付いたのです。
 
先に述べました通り、三越CRプログラムへの参加者の大半は、何かに挑戦しています。それは、恐らく個々の価値観と目標の中での「自分自身への挑戦」なのだと思います。ですから、プログラム卒業生にとって、このプログラムは自分自身のルーツであり、国際キャリアへの起点となる大切な存在となっているのです。

国際キャリアへの更なる飛躍

国際キャリアへの更なる飛躍

私は、現在、スウェーデンで日本語教師の職に就いています。鉄板シェフと日本語教師。一見、全く接点が無いように思われるかもしれませんが、実は現在の職務遂行に当たり、私にとって三越CRプログラムの経験は、多くの分野で活かされているのです。
 
まず第一に、異文化出身者を相手に「場を取り仕切る度胸」。ゲストと生徒という違いはありますが、私が一人で多数の異文化出身者を束ねるという原則原理は共通です。ゲストは、口に合わない料理を食べれば「美味しくない」という顔をされます。生徒も同じです。面白くない話をすれば「つまらない」という表情を露骨に表します。緊張感に満ちた「オンステージ」である事実は共通なのです。
 
第二に、海外での日本語教師は、日本人である自分を最大限に活かせる職務です。文化・国境の違いを乗り越えて、相互信頼関係を築き上げ、日本文化をお伝えする。この考え方と伝達技術は、三越CRプログラムの13ヵ月間で習得した、私の財産です。
 
このプログラムで習得した「知恵と技術」は、数知れません。「会話力、オープン・マインドの哲学、日本文化への知識、真心のおもてなし、心を開くコミュニケーション、異文化相互理解・・・」。全てが、私を始めとするプログラム参加者全員の、更なる国際舞台での飛躍の原動力として、血となり肉となる人生の財産であると私は考えています。
 
スウェーデンでの日本語教師の職務は、今の私にとっては、まさに「天職」のような存在です。日本文化にあこがれるスウェーデンの方々との交流を深め、「日本代表」として、日本語だけではなく日本文化をお伝えするこの職務に、大きなやりがいを感じています。今の私は、以前のように他人の目を気にする事はありません。マイペースで自分を磨く毎日です。いずれ、次の挑戦をみつけた時、三越CRプログラムの13ヵ月間を想い出し、更なる飛躍へと、また進んで行きたいと考えています。

CR修了後の先輩たち

私と三越カルチュラル・
リプレゼンタティブ・プログラム
職場紹介
  • スウェーデンの5つの学校で日本語教師

    私は現在、5つの学校で日本語を教えています。生徒は中学生から定年過ぎの方までと様々で、自分自身が日々勉強です。日本人である事に誇りをもちながら働ける職業は、私にとって最高の職業だと思っています。

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