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Interview 03

寿司シェフとしてのスキル、
エンターテイナーとしてのスキルを磨き、
“楽しさ”を文化交流の入り口にしたい

中園 健太

2014年秋期レストラン部門
Tokyo Dining 寿司サービス

寿司シェフとしてゼロからのスタート

私はウォルト・ディズニー・ワールド®・リゾートにある日本食レストラン「Tokyo Dining」で、寿司シェフとして働いています。寿司は江戸時代から伝わる伝統的な料理で、海外の方にとっては日本の食文化の代表選手のような存在です。その寿司を、まさか自分がこの手で握り、海外の方々に召し上がっていただくことになるとは思ってもいませんでした。しかも、ほかの料理のように厨房で調理するのではなく、Tokyo Diningのアイコンでもある寿司カウンターに立ちゲストの視線を浴びながら握るのですから、緊張もやりがいもひとしおです。

 

中園 健太 私は板前経験があるわけではなく、寿司屋でアルバイトしたこともない、まったくの素人でしたから、ノウハウはすべてアメリカに来てから学びました。知識も技術もないゼロの状態から、ゲストに提供できるようになるまでを短期間で修得しなければならなかったので、身につけるまでは大変でした。寿司シェフとしての技術修得には、知識より感覚の方が大事です。たとえば、しゃりの量ひとつとっても「握りは1カン17g、巻き物は1巻5オンス」と決まっているのですが、それを1回1回量っていては追いつかないですし、見ているゲストも不安になるでしょう。
 
Tokyo Diningには、「日本文化を伝える」という大切な役割もあるので、寿司を握ることもひとつのパフォーマンス。サッと片手で取ったしゃりが、ぴたり17g! というのは、寿司シェフとして当然の技術なのです。それができるようになるには、とにかく数をこなすしかありません。何度も練習して重さを手に覚えさせました。最初はこれくらいだと見当をつけてとったものの、量ってみると1オンスも違うということもありましたが、今はほぼ正確にとることができます。
 
日本から両親がゲストとして来てくれたとき、両親は私のいる寿司カウンターから離れた席に座っていたので、自分で握った寿司を両親のところに持っていったんです。両親はおいしいおいしいと食べてくれたのですが、それを私が握ったとは思いもよらなかったようで、「本当は裏にいる職人さんが握ってくれたんでしょ」と疑っていました。両親を騙せるくらいになったのだから、少しは自分も成長できたかなと思い嬉しかったですね。

ゲストになじみやすい食文化の伝え方

日本の寿司屋と違って、Tokyo Diningには巻寿司の種類がたくさんあります。そのなかでもっとも人気があるのはボルケーノロールです。これはカリフォルニアロールを8つに切って山の形に積み上げ、上から小さく刻んだマグロやサーモンなどの刺身と、スリラッチャ(激辛の赤い調味料)とマヨネーズを混ぜたソースをかけたもので、その名の通り火山をモチーフにしたユニークなプレートです。
 
このように派手にアレンジされた寿司に、日本人は少し抵抗があるかもしれません。私も最初はそうでした。日本人が日本の食文化を伝えようとしているのに、日本にはないものを作っていいのかなと思ったこともあります。けれども、毎日ゲストの皆さんがおいしいと食べてくださる姿を見ていて、そんな懸念はいつのまにか吹き飛んでしまいした。

ゲストになじみやすい食文化の伝え方 ここはアメリカで、お食事に来てくださるのは世界各国からのゲストです。 ボルケーノロールは、その方たちに喜んでいただけるよう追求したメニューなのです。そこを入り口にして日本の食文化を知っていただき、いずれ本来の日本のお寿司にも親しんでいただければ、こんなに嬉しいことはありません。
 
私が寿司を握っていると、興味津々の表情でじっと見ている方もいらっしゃいます。寿司シェフはほかのセクションに比べるとゲストとの接点が少ない仕事ですから、そんなときはいつも「どんなネタがお好みですか? 」「今日のお寿司はいかがでしたか? 」と必ずお声がけして、感想をお聞きするようにしています。帰る前にわざわざカウンターに来て、「ありがとう」とチップを置いてくださる方もいて、「今まで食べたお寿司の中でいちばん美味しかったよ」と言っていただいたときは、心の中でガッツポースをしました。

オンリーワンのパフォーマンスにしたい

寿司シェフのいちばんの見せ場は「寿司ショー」です。これは寿司づくりをひとつのショーに仕立てた、Tokyo Diningならではのエンターテインメントで、シェフは店全体に聞こえるような声でしゃべりながら、楽しく寿司を作っていきます。その姿はスクリーンに大きく映し出されるので、店内のどの席からも見ていただくことができるんです。
 
ところどころでは「アチョー!」と声をあげて野菜をカットするなど笑いを誘う場面もあるので、それまでおしゃべりしていたゲストもたちまちスクリーンにクギヅケになります。これも、声と音で人の視線を集める作戦。黙々と寿司を握る日本の寿司職人のイメージとは真逆かもしれませんが、職人としての技術とエンターテイナーとしての技術を駆使して、日本文化を伝えるひとつの形ではないでしょうか。

 

オンリーワンのパフォーマンスにしたい 現在、寿司ショーは先輩が担当されていますが、近々私もステージに立つ予定です。そのときは、遠い席にいらっしゃるゲストも、「なんだろう? 」「もっとよく見たいな」と、近くに来ていただけるショーにしたいんです。ゲストの中には近くに寄ってはいけないんじゃないかと遠巻きで見られる方もいらっしゃるのですが、そんな躊躇を飛び越えるほど印象的なパフォーマンスにするにはどうしたらいいか、現在模索中です。
 
代々継承されてきた台本に、どんな演出をプラスしてゲストを楽しませるかを考えるのもすごく楽しくて、たとえば「喝!」と日本独特のかけ声をかけるのはどうかとか、日々アイデアを練っています。
 
先輩方から学ぶと同時に、これまでなかったパフォーマンスを探して、オリジナリティーにあふれたショーにしたいんです。英語力、寿司職人のスキル、エンターテイナーとしてのスキルなど、いろんな角度で自分が試されますが、その何倍も楽しむぞ! という気持ちでいます。

アメリカで自分の場所を見つけた

アメリカで自分の場所を見つけた

高校生のとき、校則が厳しくて閉じ込められたような窮屈さを感じていました。そのときの担任の先生に「アメリカが合っているんじゃないか」と勧められ、高校2年生のときテキサスに留学したんです。このことが英語と関わる最初のきっかけでした。
 
アメリカ人家族の家にホームステイさせてもらって学校に通ったのですが、そこでの暮らしも学校生活ものびのびしていて、私はすぐに「ここが自分の場所だ!」と思いました。日本にいるときは目立つとまわりによく思われなかったので、自分の「こうしたい」という思いを抑えてしまうところがあったのですが、アメリカではどんな意見でも、みんな一度はちゃんと聞いてくれましたし、チャンスもくれました。
 
私は「Ovation」という、歌って踊るクラスをとっていたのですが、入ってすぐに「振り付けを担当させてほしい」と申し出ると、みんな快く「いいよ」と言ってくれました。新入りでしかも外国人の私でも、受け入れてくれたのです。先輩・後輩とか、アメリカ人・日本人とか、立場や国籍は関係なく、その人の「やりたい」という意思を尊重してくれる土壌を感じました。この経験は自分を解放する、いいきっかけになったと思います。
 
帰国し、高校を卒業してからは、英語や国際交流に力を入れている大学に入学。前々から興味があった演劇もはじめ、小さな劇団をつくって、脚本・演出・演者として活動しました。この劇団は今も続いていて、私がアメリカにいる間は副団長が運営してくれています。
 
今は寿司ショーのことで頭がいっぱいで、帰国後の具体的なイメージがあるわけではないですが、やりたいことはいくつかあります。たとえば、ディズニークルーズのレストランのサーバーに興味がわいていますし、映画の配給会社に就職して、アメリカ映画を日本に輸入する仕事に就きたいとも考えています。いずれにしてもCRプログラムで身につけた、英語やエンターテインメントのコツを活かし、“楽しさ”を文化交流の入り口にした活躍をしたいと思っています。

中園 健太のプロフィール

中園 健太のプロフィール

Q.1CRプログラム以前の海外生活経験は?
高校2年のときのテキサス留学が最初の生活体験です。日本人は私ひとりだったのですが、ホームステイ先も学校生活も存分に楽しみました。
Q.2CRプログラム参加前の英語力はどのくらい?
映画を字幕なしで理解できる程度です。日常生活には困らないものの、ビジネス英語やホスピタリティ英語は知りませんでした。
Q.3CRプログラム参加前の接客力はどのくらい?
大学時代のアルバイトでホテルのサーバーをやっていたので、敬語や接客マナーなどは一通り覚えました。
Q.4CRプログラム参加を考えている人にひと言!
CRプログラムでの職業体験は有意義です。こちらに来て後悔することはないと思いますし、この先こんな環境に身をおくことは一生涯ないかもしれません。オンリーワンの経験ができると断言できます!

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    滞在中はDisney社国際人事部が統括するプログラム専用アパートでの各国プログラム参加者との共同生活をします。クリスマスの時期にはツリーを3本も置き、電飾やオーナメントで賑やかなデコレーションを楽しみました。多国籍のルームメイトやその友人なども呼んで寿司を振舞ったり、他国の料理を振舞ってもらったりして、異文化交流することができました。

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